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7月のある休日


 真夜中に雨が降り始め、やがて開け放った窓からザーザーと大きな音が聞こえてきた。
 ベッドにもぐりこんだ私たちは一緒に耳を澄ましながら、思ったことを口にする。
「こういう夜はよく眠れるんだよな。もっと、降れ」
と、彼が言う。
「雷が落ちたらどうしよう」
 私は暗闇に落ちる雨に少し怖い気持ちがしていた。
 温暖化のせいか、ここ北海道でも年に数回は雷雨が来るようになった。
 子どもの頃、カミナリ様といえば絵本の中に出てくる珍しいもので、実際に見られる機会はそうなかった。初めて稲光を見た時の興奮を今でも覚えている。

 日中は27℃もあって、蒸し暑い一日だったから、ようやく雨が降り出したかという感じだった。朝になって雨が止んでいれば、清々しい青空が広がっているに違いない。夏の雨はだいたいいつもそうなのだ。

 気温が高い時間帯を避けて、夕方、バラ園へ出かけた。この時期、大通公園には多くの種類のバラが咲いている。

 7月上旬はラベンダーとバラの季節なのだ。紫陽花は小さなブロッコリーのような蕾をたくさんつけていて、まだ咲いてはいない。

 バラの美しさを何かにたとえるとしたら、何があるだろう。いろいろ考えて思い浮かんだのは、月の光くらいである。
 バラには露がよく似合うし、もしその濡れた姿が月の光に照らされていたら、この世のものとは思えないほど優しくて、心を打たれるだろう。残念ながら、想像するだけでまだその光景を見たことはないのだが。

 そんなことを考えているうちに、やがてバラ園全体が黄金色に染まり、ベンチには夕涼みをしている人たちが静かに風景に溶け込んでいる。先ほどの暑さが嘘のように涼しい風が吹いて、時がゆっくりと流れていた。

 大通公園を札幌の中心部に向かって歩き出す。
 ライトアップされたテレビ塔、街のネオン、木々も、ほのかに光る噴水もなにもかも美しかった。情緒的だった。
 ここはなんて美しい都市なのだろう。

 短い夏がもうすぐやってくる。やがて夏を楽しむことに夢中になり、花のことなどすっかり忘れてしまうだろう。
 昔は夏が短いことが悔しくてしかたがなかった。
 夜には楽しいことがたくさんあった幼い日々を思い出しながら、眠りにつく。あのワクワクとした待ちきれない気持ちは今も消えない。
 


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私、更年期かしら

 昨日は仕事中に具合が悪くなって吐いてしまった。
 早退して家で寝まくった。朝起きてもまだ調子がイマイチだったので、病院へ行くことにした。

 大病院で診察を受けたのはずいぶん久しぶりだった。
 少しめまいと嘔吐があっただけだったが、「点滴を打ち、血液検査をしてよく調べましょう。脳の方も検査した方がいいですね」と言われて、ちょっとビビってしまった。

 3年くらい健康診断を受けていなかったので、ま、いっか。
 検査の結果は来週出るとのことだった。

 家に帰ってパンを食べ、薬を飲んだが、なんだかヒマだった。
 外の風に当たりたい気分。
 家でじっとしているより、散歩に出たいと思った。

 近所のパン屋をのぞくと「1000円以上のお買い上げで、オリジナルトートバッグをプレゼント」のポスターが貼ってあった。3日間限りのサービスだ。
 こんなことで私のテンションはいとも簡単に上がってしまうのである。メールや電話でパン好きの知り合いにも教えたくなってしまうのであった。
 少し冷静さを取り戻して、再びテクテク。
 おいしそうな牛肉専門店があった。高いけどランチタイムならいつか食べに来られるかもしれない。
 昨日の朝食以降、ほとんど何も食べられなかったくせに、この食欲である。

 さらに歩く。信号待ちをしていると、ふと「人間ってなんで病気になるんだろう」急にそんなフレーズが浮かんできた。「ずっと健康で年を取れればいいのに」
 なんだか悲しくなってきた。

 ショッピングセンターに入って、スタバで何か飲もうか悩む。コーヒーを飲んでまた胃がムカムカしてしまったらどうしよう。
 やっぱりまずは本屋だな。ということで、2階へ上がる。
 そして本屋に着いた途端、真っ先に目に入ったのは「7日間で突然頭がよくなる本」(小川仁志 著)。
 んな、ばかな。7日間で頭がよくなるわけないじゃん。そう思いつつ、興味がないと言ったら嘘になる。
 その横には「雑談力の上がる話し方」(齋藤孝 著)と「聞く力」(阿川佐和子 著)。
 気になる。気になる。頭よくなりたくないっていう人、本当はいないだろう。
 しかしそれらの後ろにあった「大泉エッセイ 僕が綴った16年」(大泉洋 著)の方がやはり気になるのである。
 この辺の商品の並べ方、見せ方のセンスが、本屋の力量を表しているような気がした。うまいなあ。

 本屋が経営しているガラスの向こうのカフェ。
 たまにはぜいたくしてカフェにでも入るか。息抜き、気分転換、リラックス。なんて素敵な響き。

 ダージリンティーだけ頼むと630円。ケーキセットにすると750円。
 こういう選択って「誘惑との戦い」とも言えるのではないだろうか。紅茶だけ飲むつもりで入ったのに、やっぱりケーキセットを注文してしまうのだ。意志が弱いということだろう。

 そういえばここは以前アルバイトの面接に来て、落ちた店だった。
 こういうカフェにも一人で堂々と入ることができる、私は神経の太いおばさんなのだ。


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プロフィール

RISA

Author:RISA
本とカフェ巡りが好きな40代女性です。北海道札幌生まれ。
いつか本を出版するのが夢☆です。

現在、およそ2日に1度のペースで更新中です。

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